震災後、宮城県石巻市では180か所近い避難所が設けられました。そこには多くの子どもたちも避難していました。市内3か所で絵画教室を開いていた柴田滋紀さんは、自身が避難した石巻高校で満足に遊べず疲弊している子どもたちの姿を見ました。
　「子どもたちのために学校のような空間、安心して遊べる場所を提供したい」その思いから、柴田さんは3月22日に石巻こども避難所クラブ（現ＮＰＯ法人にじいろクレヨン。以下、にじいろクレヨン）を立ち上げました。
　ドッジボールや剣道、サッカー、縄跳びといった体を動かす遊びや、絵本の読み聞かせ、お絵描き、折り紙などの遊びをプログラム化しています。
　当初は柴田さん1人だけでの活動でしたが、複数の避難所・仮設住宅で活動するためには人手が必要で、ボランティアを募りました。今では子どもの教育に関心がある大学生たちを中心とするボランティアスタッフが柴田さんとともに子どもたちの遊び相手を務めています。
　すでに避難所は閉鎖されており、今の活動場所は仮設住宅です。石巻市内8か所、東松島市と仙台市でそれぞれ1か所ずつ、各仮設住宅で毎週1回、決まった曜日に遊び場を提供しています。
　昨年の7月には、震災当日からその後のにじいろクレヨンでの活動までの柴田さんの経験をまとめた書籍『にじいろクレヨンが描いた軌跡』を出版しました。
　「子どもたちが元気に遊べる場所を」との思いから始まったにじいろクレヨンですが、今後は子どもを軸としたコミュニティづくりにも力を入れていきます。
　「多くの悲しみを1度に経験した子どもたちには、これからたくましく生きて
ほしい」
“おんちゃんししょう”と子どもたちに慕われる柴田さんはそう願っています。