ＦＭあおぞらは、亘理町にある臨時災害放送局です。
　震災直後の亘理町は電気水道などのライフラインも満足に通っていない状況で、食料品やガソリンといった生活必需品をどこで得たら良いかという情報が欠乏していました。そこで、吉田圭さん( 現ＦＭあおぞら代表) は、亘理町に緊急時の情報発信が必要だと町へ訴え、3月24日に西垣裕子さん( 現ＦＭあおぞら副代表) を始めとする亘理在住の主婦たちと共にＦＭあおぞらを立ち上げました。
　当初のＦＭあおぞらのメンバーはラジオを放送することに関しては全くの素人。機材こそ、最低限の物が支援で揃えられましたが、先行き不安なスタートでした。しかしメンバーは、町役場から提供される各避難所の避難者数、給水情報、自衛隊による入浴支援の情報のほか、スーパーの限定開店時間などの情報を自らの足で調べて逐一放送しました。とくに余震などの災害情報に関しては、新しく正しい情報をリアルタイムで発信するＦＭあおぞらの放送は、多くの防災無線が津波で倒れ他に災害情報を得る手段のなかった人々にとって、非常にに有益なものになりました。
　またＦＭあおぞらは、2011年4月1日以降、毎月、震災の月命日に、震災で亡くなった方々の名前を読み上げるという特別番組「お名前読み上げ」を放送しています。
　亘理町の死者数は306名。ですがＦＭあおぞらでは亡くなった人々をそのような形でまとめたくありませんでした。ＦＭあおぞらが大切にしたのは「数で表せないもの」＝「名前」だったのです。
　これからのＦＭあおぞらについて、吉田さんは「地域放送の使命は、町の情報をきめ細やかに伝え町民も自ら発信できる、いわば町の中の広場を作ること。今後は、放送を通じて町のコミュニティを結び直し活性化できるよう働きかけていければ」と話します。